「巻くだけで腹筋」の特許

  • 2017年02月16日

 「巻くだけで腹筋」のキャッチフレーズでショップジャパンから販売されている腹筋トレーニング用ベルト「スレンダートーン(商標登録第5127137号)」という商品があります。低周波シグナルを断続的に流して腹筋を刺激することで、積極的に腹筋運動をしなくても、ベルトを巻いているだけで腹筋が鍛えられるというものです。

 この技術は、日本では「腹部筋肉刺激装置」という発明の名称で平成12年に出願され、平成20年に特許第4112180号として登録されています。特許権者は、アイルランドのBMR(バイオメディカルリサーチ)社です。請求項1に記載された発明の内容を簡単に言うと、「使用者の胴部に巻かれるベルトに中心電極と左右の側部電極とを設置し、信号発生手段により電極にパルス信号を与え、腹部筋肉を刺激するようにした装置。」というようなものです。また、その改良発明と思われる出願が平成28年7月に特許第5973621号として登録されています。こちらは、電極の形状や、中心電極と側部電極との面積の関係等が特定されています(下図は特許第5973621号公報から引用)。

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 ところで、「筋力トレーニング」つながりの別の話題として、平成28年11月30日、知財高裁は、「筋力トレーニング方法(特許2670421号、特許権者:株式会社ベストライフ)」の特許無効審判の不成立審決に対する審決取消訴訟において、原告の請求を棄却する判決をしました。

 本件発明は、「・・・緊締具を筋肉の所定部位に巻付け、・・・筋肉に疲労を生じさせ、もって筋肉を増大させる筋肉トレーニング方法であって、筋肉に疲労を生じさせるために筋肉に与える負荷が、筋肉に流れる血流を止めることなく阻害するものである筋力トレーニング方法。」です。この発明に対し、1.進歩性欠如、2.公序良俗・公衆衛生違反、3.記載要件違反を請求理由として、原告から特許無効審判が請求されました。特に興味を惹くのが2番目の公序良俗・公衆衛生違反(特許法32条)です。原告は、本件発明は、本来的に治療行為、美容行為を含んだ筋力トレーニングであること等から、社会的妥当性を欠くと主張しました。しかし知財高裁は、本件発明は、一義的に人体に重大な危険を及ぼすものではない等の理由により、本件発明に特許を認めること自体が社会的妥当性を欠くものではないと判示し、原告の主張を斥けました。

 近年、筋力トレーニングに関する機器も理論も以前に比べて多様化しています。使用者は、効果に個人差があることをよく認識し、自分に合った機器や使用方法を選択することがより重要になってくると思われます。ちなみにこういった商品に注目が集まるのは、健康志向の時代を反映しているようです。

(コナン)

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